スキルエピソード7

コミュニケーションの深め方③

 コミュニケーションを深めるためには、店長とクルーさんの信頼関係の構築も重要です。店長は、「私はこの店ではまだまだ新参者だ」と謙虚な心を忘れず、相手を敬いながら、一つ一つ丁寧に耳を傾けていく。その姿勢を貫くことに尽きると思います。

 例えば、事務処理をしているときにクルーさんから話しかけられたら、一旦手を止め、その人の方に体を向き直して、「どうしましたか」と相手の思いを受け止めていく。これを何度か繰り返すうち、イライラしたり、何をしていたか忘れてしまうこともあります。それでも自分より相手を優先していく。ついつい立場で偉そうにしてしまう自分だからこそ、それぐらいして丁度良いと思います。傾聴しているつもりでも、つい「結論はなんですか」と、話を遮ってしまいたくなるときもありますが、その心を横に置いて、クルーさんの話を最後まで聞き切る。そしてクルーさんの言葉が途切れたときに自分が話し始める。そのような日常の積み重ねが、クルーさんからの信頼を得ていくことにつながると思います。

 相手には相手のニーズ(思い・願い)があります。それを聞き切らないうちに、途中で遮ってしまうと、相手にモヤモヤが残ってしまいます。いわゆる「話の腰を折る」という状態です。ときには相手が心を込めて発した言葉さえも、跳ね返したくなることがあるかもしれませんが、まずは自分が責任者として、最後まで相手の話を聞き切っていく。どんなに途中で口を挟みたくなってもそれを我慢し、「うん、うん」とうなずきながら聞きます。相手の胸に手を当てるような思いで聞き切り、「この人はこういうことが言いたいのかな」と感じ取ったら全身全霊でお答えしていく。その繰り返しです。

 ただそれだけでは時間がいくらあっても足りません。そのような時、例えば「15分なら時間が取れます」などと事前に相手に伝え、傾聴と費やせる時間とのバランスを適切に取る。それはクルーさんにとっても、自分にとっても良いことといえます。逆に話を一言二言でやめてしまうクルーさんには、「もう少し詳しく教えていただけませんか、 〇日の〇時から〇時までの間はいかがですか」と、こちらから話す機会を提案します。終わりの時間を設定することがポイントです。

 このように自分のできる範囲内で、精一杯努力すれば良いのです。