覚悟を決める
私が入社した1980年代は、社員と言えば定期入社か他社からの中途採用で、クルーさんから社員に上がる方はごく少数でした。しかし時代は変わり、今は人手不足が甚だしく、特に飲食業界は、タイミーやその他の人材派遣会社に頼っているのが現状です。マクドナルドでも人材確保のため、自分らしい働き方と言う名のもと、ついに茶髪金髪が解禁になりました。
ファミリーレストランの店長・料理長も、当然常に人手不足です。では現在、その不足してる店長・料理長の補填のために、どのような対応をしているかと言うと、パート・アルバイトの方を正社員として入社させて、店長・料理長の職位ついていただくということが、とても増えています。私が新任店長の頃は、そのような方はほとんどいらっしゃいませんでしたが、今は店長・料理長の20%くらいは、パートさんから昇格した方達だと思います。それが決して悪いということではありません。むしろ良いことだと思います。ただ少し店長・料理長としての覚悟が、不足している方もいらっしゃるように感じます。
私が社員としての覚悟を指導していただいたのは、入社して最初の、会社が主催している研修でした。昭和の時代の事ですから、現在のコンプライアンスに照らしてみると、問題になるところもあると思いますが、良い悪いは別にして聞いてください。
研修の初日です。研修が始まり、初めに全員で経営基本理念を斉唱しました。そしてそのすぐ後、全員直立不動の状態で、教官が私たち新入社員に対し、一声を発します。
「お前ら新入社員は〇〇〇〇(会社名です)に巣食っている虫けらだ。1円の利益も上げておらん」、、、途中の部分は忘れてしまいました、、、そして、
「アルバイトは1時間1時間を切り売りして仕事している。お前らは人生かけて入社してきたんだろう」と言われたのも鮮明に覚えています。
率直なところ、「まるで軍隊だ、すごいところに入社してしまった」と思いました。入社がちょうどバブル期だったのです。まさしく1980年代のリゲインのコマーシャルにあった、「24時間戦えますか」の世界でした。でも今思えばこの時代、どのような業種も、多かれ少なかれ同じようなものだったと思います。
この衝撃的な経験を通して、学生気分から社会人への脱皮が、うまくできたのではないかと思います。見方を変えれば、社会人として、一企業人としての覚悟を定めることができた、出来事であったと思います。
年間110日休めて、1日8時間勤務で帰宅できて、給料は〇〇以上など、耳にやさしい言葉だけクルーさんに伝えて、社員として採用してしまったら、結果的にクルーさんが不幸になります。社員になる(=リーダーになるということ)ための厳しさも伝え、その上で採用し、入社後の研修などでフォローアップを行い、目標や覚悟について正しく伝え指導していくことが、成長を促します。やはり一人前の店長になると言う覚悟がなければ、成功はなかなか厳しいと思います。
現在の社会全体の考え方、コンプライアンス、ハラスメントの定義など、昭和とは全く異なりますが、まずは1つのベンチマークとして一人前の店長と言うゴールがあり、そのゴール達成すると言う覚悟があるから、そのために何をすればいいのかが見えてきます。できたら立派な店長になりたいではだめです。
成功するためには絶対に、「一人前の店長になるという覚悟」が必要です。