トレーニング・オペレーション5

正しいワークスケジュールとその作成方法①

 人のいないお店の典型的な良くないワークスケジュールは、店長が休みなく出勤して、なおかつ出勤日ほぼ満チャン(オープンラスト)で、それでもカバーできない曜日時間帯にパラパラと他の従業員さんがいるだけ。いわゆる店長がワーカーとして限界まで体を張り、それでも不足しているところにその他の従業員者さんがかろうじて存在する、という状態です。

 このワークスケジュールの労働環境は、クルーさんから見ると最悪以外の何物でもありません。休みたいときに休めず、残業は当たり前、人がいないので常に追われてドロドロ、クルーさんが定着するわけがありません。しかし往々にしてそういう店の店長は、クルーの皆さんが人員不足で大変になっていることを認識しつつも、今日も1日飯も食わずによく働いたと納得し、自己満足の方が大きい方が少なからずいらっしゃいます。要するに店長が本来しなければいけない業務をするのではなく、ワーカーをいっぱいやって納得しているのです。店長はお店の責任者ですから、まだ頑張れるのでしょうけれども、このような状態はクルーさんにとっては、たまったものではありません。

 ワークスケジュールとは店長の部下に対しての作業指示書です。売り上げ・来客数予測に基づいた予測労働時間(=人件費)を有効に使って、CS(顧客満足)、ES(従業員満足)、会社に対しては利益予算達成のための重要なツールです。またお店のあるべき状態は、CS・ES・利益予算を達成するためにお店が自走している状態ですので、この状態を作るための重要なツールの1つになっているワークスケジュールが、正しいワークスケジュールなのです。

 ですからまず店長以外の従業員の方たちだけで、1週間を通してワークスケジュールを作成できるようにしなければなりません。これの最も大切な理由は、店長しかできない仕事を店長が行う時間を作るためです。しかし店長はプレイングマネージャーですから、ワーカーも当然できなければいけません。店長の1日8時間の勤務のうち、4時間はワーカー、4時間はマネジメントに使うのがベストだと思います。このワーカーの4時間には、シフトリーダーやトレーナーの方々のOJTも含みます。これを実現するために1週間通じてクルーさんだけで稼働できるワークスケジュールを作成しなければいけないのです。

 またこうすることでご利益はたくさんあります。クルーさんだけでスケジュールが作成できるという事は、人的資源に余裕ができるということですので、クルーさんの休み希望や急な欠勤にも対応できるようになり、また当然残業も少なくなります。人員不足が原因でオペレーションが回らずドロドロの状態が改善されることも、働きやすくなった分だけクルーさんの定着率も向上していきます。また店長も正しく公休を取ることができるようになります。

 いいことずくめのワークスケジュールですが、この状態を作るためには4つの大切な取り組みが必要です。1つ目は採用時に妥協しない、2つ目は新人の教育計画を立て実行する、3つ目はシフトリーダー・トレーナーを育成をする、4つ目は人間関係を構築していくことです。

 これを実践できれば、よほどのことがない限り人員不足から脱却できます。私の場合は店長で3店舗目から現在に至るまで、人員で苦労したことはありません。

 次回のトレーニング・オペレーションエピソードで1つずつ詳しく説明したいと思います。