正しいワークスケジュールとその作成方法③
2,新人の教育計画を立て実行する
新人が一人前に育つまで1人のトレーナーが一貫して育成すれば、何を教えたか、どこまでできるようになったか、出来栄えはどうか、次はどこから教育していけばいいかなど、全て把握していますから1番スムーズに教育が進むでしょう。しかし採用した新人も教える側のトレーナーも、出勤日はそれぞれバラバラですから、新人さんは出勤するたびに違うトレーナーさんに教えてもらうことが多くなります。ですのでトレーナーが変わってもどこまでトレーニングをしたか、出来栄えはどうだったか、どこからトレーニングすればいいか、その他の引き継ぎ事項等がスムーズに次のトレーナーに伝わるよう、トレーニング計画書と言うものを作成し使用していました。
また採用した新人の、入社時のオリエンテーションから、一人前の接客員になるまでを約30時間で育成するためのトレーニングマニュアルも作成しています。このトレーニングマニュアルとトレーニング計画書を使って、新人に教えなければいけない項目を洩れなく、そして時間内にトレーニングを終了させるようにしていました。
新人さんは当然作業も何も知りませんから、お皿の持ち方、ご案内の仕方、オーダーの取り方など作業を覚えることが中心になってきてしまいます。しかし新人教育は作業を教えるだけでは不十分です。
2つ目に大切なのはサービスマインドの教育です。作業とともに並行してサービスマインドの教育を行っていくことがとても大切になります。サービスマインドとは私たち接客する者の、心のあり方、考え方の事ですが、私はトレーニングの初日にまず「私たちの仕事の目的はお客様の満足を得ること」、これを必ず新人にお伝えしています。そしてこの仕事の目的を基本として、「どうすればお客様に満足していただけるか、自分で考え行動できる接客員が一人前の接客員です」と言う事も併せて伝えています。
そしてそのサービスマインドのトレーニングですが、「早くしましょう」ではなく、「お客様がお待ちだから早くしましょう」、「お冷を交換しよう」ではなく、「お客様は喉が渇いているだろうから、お冷を交換して差し上げよう」など、主語を意識して、「お客様」と言う単語をあえて言葉に入れてトレーニングするようにしています。そうすることで新人はお客様のために私たちは動くのだと言うことを、体で理解していきます。
またOJTの最中に「今お客さんは何してほしいと思ってるかな」など、お客様のための次のアクションを考えさせることも大切です。
このサービスマインドのトレーニングを行わないと、呼ばれたらオーダーを取りに行く、料理が上がったら料理を持っていくだけの、いわゆる料理を運ぶ猫のロボットと同じになってしまいます。ロボット自体が悪いということではありません。せっかく人間の接客員が料理を運ぶのに、ロボットと同程度の価値しかお客様に伝わらないことが問題だと言うことです。
この部分をまとめると、作業を教えただけでは、お客様に作業を提供するだけになってしまう。作業を教え、その上にサービスマインドを教育していくことで、作業に心遣いや気配りと言うマインドが入っていくから、作業がサービスに変わっていくと言うことです。
そして大切なトレーニング項目の3つめ、それはルールの尊守です。最もベーシックなところでは挨拶・言葉遣い・遅刻欠勤などがありますが、私がルールの根幹の部分と考えているのはワークスケジュールのルールです。
その中でも2つ、⓵採用の条件としているところの土日の半分は出勤する(これは主に学生さんです)、②急な欠勤(すでに確定しているスケジュールを休む)は、責任を持って自分で代わりを探すということです。この2つをクルーさんに守らせることがとても重要で、またクルーさんにとっても、この2つのルールを守ると言う事はかなり難易度の高いものですので、これを守ることができれば、他のルールもおのずと守れるようになっていきます。基本の考え方としては、「その日のこの時間帯(クルーさんがシフトインしている時間)はあなたに任せるので、責任を持って守ってください」ということです。
しかしこのルールを教えてあっても初めての欠勤のときは、まず代わりは見つけていません。ですので最初は交代を立てるための出勤交渉を1から教え、併せて一緒に対応していきます。
具体的な自分で交代要員を探す手順は、
⓵休み希望者はまずお店に電話して、〇〇日にお休みしたいと言うことをその日のシフトリーダーに伝え、併せてその日に出勤しているクルーさんに交代していただけるか確認する。
②自分が休みたい日に出勤している方で、伸びてもらうかまたは早く出勤してもらえる可能性のある方を、シフトリーダーにワークスケジュールを確認してもらいながらリストアップしていただき、対象者名前をシフトリーダーから聞く。併せて自分が休みたい日に出勤していない方も確認する。
③まず伸びてもらうかまたは、早く出勤してもらえる可能性のある方に直接電話する。その次に出勤していない方に電話する。
④交渉が成立したらお店に電話し、〇日誰々さんと交代しましたと、その時にお店を守っているシフトリーダーに伝える。また代わりの方がどうしても見つからなかった時も、〇〇さん、〇〇さんに連絡しましたが見つかりませんでしたと、具体的取った行動を同じように報告する。
中々厳しいように聞こえますが、クルーさんにこのプロセスを踏んでいただくことで、学生さんも仕事はサークル活動ではないと言うことを理解するようになります。
以上新人教育の3つの柱は、
1、作業を教える
2、マインドを教える
3、ルールを守らせる
です。
正しく教育された新人の方は、いずれ必ずシフトリーダー・トレーナーになっていただけるでしょう。