出来事エピソード2

外国人留学生に感謝です!

 このお店は月商22000千円あり忙しいお店でしたので、クルーさんは常時60名は在籍していました。また大学がすぐそばにあったので、外国人留学生が多いときは14名いらっしゃいました。今でこそ多くの外国の留学生の方がMacや牛丼チェーン、特に日高屋さんなどで勤務していらっしゃいますが、私がこの店を担当していた2000年代は、飲食店で勤務されている外国の方はそれほど多くなく、またいろいろな事情からだと思いますが、日本語を話せる方もあまり多くありませんでした。そのような経緯もあり、当初この店を引き継いだときに従業員の25%が外国の方だと聞いて少し不安になりました。

 しかし実際に一緒に勤務してみると、私の不安は全く不要なものだということがわかりました。ほとんどの留学生の方は聡明な方たちだったからです。確かに日本語についてはネイティブスピーカーではありませんから、私たち日本人には及びませんが、仕事を覚えることや仕組みを理解することなどの能力は、むしろ普通の日本人のアルバイトの方よりも優れていることが多かったと記憶しています。

 とにかく全員ポジティブなんです。何でも吸収してしまおうということなのでしょう。たとえば料理提供でも、まだ教えていないにもかかわらず片手を添えて両手で提供していたので、なぜ両手で提供したのか聞くと、店長がそうしているのを見たからと言う答えが返ってきました。

 ある時インドネシアから来た学生さんに、学費はどれぐらいかかるのか聞いたのですが、学費は全て国に出してもらっているのでかかりません。でも国費で留学するためには、4つの試験をパスしなければいけないので大変です。少しの人しか受かりませんということでした。

 ちなみにこの店の他の留学生の方はどうかと聞くと、ほとんどの方が国費で留学されていると言う事でした。また言葉についても、留学生の方の母国語、第二外国語として英語かロシア語、そして日本語の最低3カ国の言葉を話せます。中には5カ国語を話せる留学生の方もいらっしゃいました。たとえば休憩室での会話を聞いていると、キルギス、アゼルバイジャン、カザフスタンなど旧ソビエト連邦の国の留学生の方たちがいると会話はロシア語になっており、またフィリピンや韓国、ベトナムなど東南アジアからの留学生の方がいらっしゃる時は、公用語は英語となっていました。

 私も頑張る方には目一杯応援したいと思っていましたので、留学生の方たちの質問に対して、仕事以外のことについてもできるだけ時間をとって答えるよう心がけていました。もっと細かな説明が必要な時は、より語学力のある方を通訳として参加していただいたことも多々あります。またムスリムの方には、豚肉料理についてはもちろんですが、ラマダンの時など食事がありますので、休憩は必ず日没後に出すようにしていました。

 留学生の皆さんが一生懸命日本語を勉強して日本語で話そうとしている姿を見て、私も同じようにしたらもっと学生さんと距離が縮むのではないかと思い、作業指示を英語で出せるよう勉強しました。例えば「30分休憩に入ってください」は、You can take a 30minute break now.などです。

 しかし日本人は往々にして、通じるかどうか不安なので英語を口にするのが恥ずかしいのです。でも留学生さんたちの姿を見て、「通じる通じないにかかわらずとにかく話して覚える」と言うスタンスを見て、素直に見習うこととしました。そして実践しました。いつもよく冗談を言って笑わせていた留学生の方がいるのですが、その留学生の耳元で「I was born to love You」(フレディ・マーキュリーの曲ですね)と言ってみたのです。そしたらその学生さん「店長やだっ!」と言って肩をポンと叩いてきました。私は思わず「やった!通じた!!」と心の中で叫んでいました。その留学生の方からは「me too」と言っていただいたのでセクハラではなかったと信じていますが。

 そこからです。その時から英語で話すことへの抵抗がほとんどなくなりました。まさに真実の瞬間でした。しかしどうせなら「店長やだ」も英語で言っていただけたらもっとよかったのになぁ、なんてちょっと考えてしまいます、、、

 なんとこのお店は英会話の勉強にもってこいだったんです。例えば留学生Aさんにこういうことを英語で言いたいと言うとすぐにそれを教えてくれ、その場で留学生Bさんにそのままお話しします。言いたいことをリアルタイムに教えてくれるのですごくわかりやすく、そしてその場で言葉にしますから、感情が入っている状態での実践となります。教科書で勉強するより何倍も身に付きました。どうせなら仕事と一緒に英語も勉強してしまおうと、結果的に留学生たちと何とも楽しい日々を過ごしていました。英会話など全くダメだった私ですが、日常会話ぐらいはできるようになりました。しかし雇われ店長の性である転勤がありあれから14年、全く英語を使わなかったので、残念ながら現在はほとんど忘れてしまいました。

 このお店には約4年在籍していました。いろいろな国の方との交流を通じて、勉強させていただいたのは私のほうでした。改めて留学生の方たちに心より感謝申し上げます。

 ナルギーザ、ラニ、サラリー、アイカ、ホユウ、オルソーそして皆様方、本当にありがとうございました。