自信と自覚を持ったリーダーを育成する
ファミレスの草創期である昭和の後期では社員は店舗に何人もいました。しかし現在は違います。一般的には社員は店舗で1人、後はパートさんです。しかし店長だからといって、1年365日24時間お店にいるわけではありません。当然労働基準法を守らなければなりません。では店長が不在時にお店の責任者はどうすれば良いでしょうか。
以前このようなことがありました。あるレストランで店長に伝えたいことがあったので、店長か責任者に代わってもらえないかとお店のパートさんに伝えたところ、責任者はいませんと言う返答が返ってきました。多分このパートさんは、単純に社員がお店にいなかったので、責任者がいないと言ったのかもしれません。でもそれではお客様に対して失礼なことだと思います。私たちはお客様に提供させていただく料理とサービスの対価として代金をいただくわけですから、その料理とサービスについて責任があります。責任者がいないと言う事はつまり、その責任を放棄しているとお客様に思われても仕方ないと思います。良いお店とはそこで提供される料理とサービスに、お客様が価値を感じられる事はもちろんですが、何度も来ていただくためには、まず信頼できるお店になることがとても重要なことだと思います。その第一歩は全時間帯に必ず責任者がいること、責任者としての能力が高い低いではなく、まずは私が責任者ですとお客様にちゃんと伝えられるパートさんがいることです。言い換えれば責任者としての自覚を持ったパートさんがいると言うことです。それだけで例え問題が解決しなかったとしても、お客様の安心感はぐっと高まります。
しかしただパートさんに、あなたはパート歴が長いから責任者をやってくださいと言っても、ただこれだけではやっていただけないことの方が多いのではないでしょうか。それではどうしたら自覚を持って店長不在時に責任者として勤務していただけるクルーさんを育成できるのでしょうか。
まずは土台として組織を作ることです。例えばすかいらーくさんならBクルー、Aクルー、トレーナー、キャプテンなど、ロイヤルホストなら、スタークルー、トレーナークルー、シフトマネージャークルーなどパートさんが自分の立ち位置が具体的にわかるようにすること、自分は一人前に接客ができるようになったのか、他の人に教える立場なのかなどです。できればその職位に応じた時間給もわかるようにしておくと良いと思います。そしてその各職種の役割と責任範囲を明確にすることです。この仕事この作業を覚えることでこの職位になり、給料もこれだけ上がるなど本人がわかるようにすると言うことです。これはまた目標設定にもダイレクトに結びついていて、パートさんのモチベーションアップにも大きく貢献します。お店を成長させるにあたって、各自の目標設定とその取り組みは必要不可欠ですから、また改めてお伝えしたいと思います。
次に行うのは具体的なトレーニングです。責任者はこのような仕事をする人だと理解できても、まだどうすればいいかわかりません。ですからまず知識から充足してあげることです。私は時間帯責任者を育成するにあたって「時間帯責任者認定講座」と言うものを作り、クルーさんに受講していただきました。内容はお店のオープニング、クロージング、現金管理、緊急時の処理、食品衛生、発注と検収、トレーニング、苦情対応、報連相についてなど8時間の講義です。文章にするととても大変そうですが、すべてをお店で常に行われていることをベースに、具体例を示しながら行っていきますし、また時間帯責任者になる方は少なくとも2 ~3年は勤務されている方ですからオペレーションも理解されていますので、ほとんど問題なく進めることができると思います。
具体的なトレーニングですが、例えば緊急時の処理で停電の場合などは、
①真っ暗になったら店の外を見る。外も暗かったら停電、自分の店のみだったら漏電の可能性大
②お客様対応(状況の説明、テーブルにろうそくを立てるなど)
③漏電の復旧
・配電盤の扉を開けてすべてのブレーカーを下ろす。
・ブレーカーの主幹を上げ、小さいブレーカーを1つずつ上げていく
・あるブレーカーで漏電が発生したら、そのブレーカーをOFFにして、他のブレーカーをすべてON にする
上記のようにクルーさんと具体的な作業を一緒に実施します。ここまでが6時間です。
次にお客様対応、特に苦情対応について勉強します。まず過去の事例をもとに、その苦情が発生した原因対策を一緒に考えます。そして最後に苦情対応のロールプレイングを行います。お客様役をクルーさんにしていただき、私が責任者として苦情対応します。次に店長がお客様の役をやり、クルーさんが責任者になりきって対応していただきます。これが約2時間です。
無事にトレーニングを終了して時間帯責任者(シフトリーダー)として認定するときに、バックヤードに「〇〇さん〇月〇日付で、時間帯責任者に昇格」と全員に知っていただくために掲示します。全部で8時間かかりますが、なぜここまでするかと言うと、パートさんに自信と自覚を持っていただきたいからです。できそう感がなければ、責任者など絶対にしていただけないと思うからです。
それから時間帯責任者という職種の苦情対応に対する考え方ですが、時間帯責任者の対応はあくまでファーストエイドだと言うことです。初期対応ですね。基本的にはその場で解決してもしなくても、まずはお客様に安心してお帰りいただくことができれば合格としなければいけません。基本的には問題を解決するのは店長です。後日改めて店長が対応するのです。でもその場の対応でお客様が納得していただけるのであれば、それに越した事はありませんから、そのようなレベルの高い責任者の育成もまた店長の大切な業務になります。
一生懸命教えて晴れてシフトリーダーとして認定したら、そのパートさんを信じてお任せする、そしてその結果については100%責任を取る。これが店長のあり方だと思います。